今あばかれるあのこと?

ファンキーな占い師
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●某月某日
これは、以前連載していたコラムのために、ある人気占い師を取材したときの模様である。

占いなどは、信じないどころか、害悪であるとも思っている。最近は博士号もないのに工学博士を名乗る風水まがいの占い師や、下品かつ高圧的な宝石だらけの女性占い師が、テレビ、その他のマスコミで跳梁跋扈しているが、騙される方が悪いと思いながらも、義憤を禁じえない。

そんな私の将来を、占い師に占わせるという。担当のA女史に連れられてやってきたのは、恵比寿駅にほど近い古道具屋の店先である。店の表にはさまざまな骨董品、古道具などに混じって、テーブルと椅子が置かれており、そこではカーリーヘアの女性の手を握りしめた竹中直人そっくりなおじさんが熱弁をふるっている。A女史の姿を認めると、どうみても話は途中だったのに、
「じゃあ終わりだ」
と、カーリーちゃんは追い払われてしまった。予約がたて込んでいたようで、近くのフレッシュネスバーガーで20代前半の美女が三人も順番を待っていた。
おじさんは私の顔を見るなり、
「こんな人を連れてくること、聞いてなかったよ」
とA女史に苦情を言う。私の様な者が来ることは、占いではわからないらしい。しかし、その表情には愛嬌があって、人懐こいムードだ。
「俺なんかより占いのこと詳しいんだろ?」「やりにくくてしょうがないよ。芸能人相手は初めてで、ちょっと動揺」
と、ぼやきながらも、生年月日を聞かれた。健康と芸能に関して占ってもらうことにする。途中、
「尊敬してますから」
と、尻がくすぐったくなるようなお世辞を何度も投げかけられる。
風水盤をしばし凝視した後、「赤丸が二つ」と出た。何でも
「2000年12月21日から向こう6年間、地は裂け、雷鳴は轟く」
のだという。とにかくこれは良い意味だそうで、前途は明るい。
続いて左手を見る。私はバツイチの相だそうで、離婚していないというと、「じゃあ親は」と聞いてくる。一見型破りな雰囲気だが、なかなかセオリー通りの進め方ではないか。
「不倫で付き合っている女いるでしょ、20%出てるよ」
という。
「じゃあ、これから付き合う可能性があるってことですか」
と聞き返せば、なぜか
「うまいねえ。どっちが易者がわからないよ。易の逃げ方はそれなの」
と冷やかしてくる。そして
「NHKにはどんどん出て。するとすごいことになるよ」
「何がですか」
「でね、キッチュより松尾貴史の方がいい。でも俺は姓名判断やらないけど。フォルムがいけないね」
「フォルムって?」
「頼むよ」
「何がです?」
「石田純一みたいな服はだめ。松尾貴史ともあろうものが、石田純一はダメ。あいつみたいになっちゃだめ」
「なりません」
「ほら、ウルフマンジャックのパロディやる、なんだっけ、小林克也、その友達の、スネークマン・ショーをやってた」
「伊武雅刀さん?」
「そうそれ。……おい、金ちゃん傘用意しろ、ここを防御しろ。眩しいんだ!俺ね、娘が六人いるの。どこまでいったっけ。三ちゃん!何か買ってきてやれや!」
「いえ、お構いなく」
「あんた、本当は芸人やってなかったら何やってたか」
「何ですか」
「航空自衛隊」
「え」
「302地点、降下準備できました。はい降りて。教官です」
「自衛隊の教官ですか」
「あとは吉村作治について考古学の発掘。なんでそんなことは分かるのかというと、これは生命線、これは頭脳線っていうのは微笑か女性自身。どこに住んでんの」
「世田谷です」
「将来は横浜に住みます。横浜に3年後、ちょっとしたビル建てます」
「ビル!?」
「松尾貴史の磁場は神奈川県か二子玉川園。大学どこ?」
「大阪芸大です」
「大阪芸大!凄い!」
「凄くない」
「えらいの連れてきちゃったよ。それでさあ、あとで本に『いい加減なこと言いやがって』って書かれちゃうんだよな」
「書きません」
「来年は歌番組が入るから。あなたは天皇の相なの。だから頑固でそのままでいい。作詞作曲したほうがいいよ、印税生活全然できちゃう。ギター習いな。(売り物を指して)ああいうピアノ買った方がいいよ。人の保証人にはなっちゃだめ」
昔、泉アツノ氏に言われた「あなたの将来は文房具屋」という予言とともに、私の胸に深く刻まれることになるだろう。

同行したM.Gさん(超美人家事手伝い、32歳。元スチュワーデス)は、今の彼との結婚運をみてもらった。
「不倫してる?子供おろした?」
「おろしてません」
「だめだよ、なきゃだめ、不倫や水子のひとつやふたつ。今の男は、悪いけど、1年もったら結婚します。あんた眉毛が変だよ」
「え?」
「誰がやったの。ほくろを取った方がいい。人生変わります」
「ほくろですか」
「整形はだめ。その他の男を三つ四つ押さえないと。椎名桔平がいい」
「椎名……」
「知り合うきっかけを探して。西村雅彦でもいいよ。男とはやった?」
「……まだです」
「嘘いっちゃ困るよ、本当、プリミティブに答えてもらわないと。こっちも一所懸命やってるんだから!」
「……」
「携帯のストラップをも1本増やして、くるくる回しながらロイヤルホストでしゃべりまくって。成城出身なんだから下品にしても品が湧き出てきちゃう。つかこうへい劇団の下品な女オーディションで落ちちゃうよっ!!」
何か、二人とも褒め殺しにされたようである。快適だったかどうかは別だが。取材が終わるころには、本気で「横浜にビルを建てる」気になっているのがおかしかった。こんな占いなら、まあ、あっていいかな。
つくづく、私は単純な人間である。

それから三年がたったが、私が横浜にビルを建てる気配も可能性も意欲も皆無である。重ねて、その占い師は経営していた店をたたんでしまった。占いが悪かったのか。私の代わりに横浜でビルを建てているのか。裏をとるすべはない。

「父しゃべる悩みも聞かす恵比寿駅から占いにガードくぐるとは」 吃宙


  宜保愛子氏死去
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●某月某日
宜保愛子氏が、胃がんのために死亡した。71歳とは、現代では年に不足を感じる。有名人だからといって、タレントや信奉者のコメントを織り込みつつ、文化功労者が死んだような体裁で夕方のニュースが特集を組んでいたのには驚いた。


  ロシアと日本
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●某月某日
テレビの特別番組で、ロシア人の超能力者が登場。人を立たせては頭を掴んで平衡感覚をずらせてよろめかせるという、超能力でもなんでもない小技を披露した後、今度は「気」のエネルギーで空中を11メートル飛んでみせるという。なぜ11メートルかというと、過去にやったことがあるからだそうだ。スタジオの中で、われわれの目の前でやってくれるらしい。それも、助走なしで「浮かんで」移動するというのだから、こんなものを目の当たりにすることができたら、私の人生観がひっくり返ってしまうだろう。
本人は
「いつにも増してコンディションは万全だ」
と言うから、もう逃げ道はない。
われわれも興奮し、固唾を呑んで見守った。やがて彼は、太極拳の出来損ないのような動きをしばらく続けていたかと思うと、仰向けになって倒れたり、いかにも能動的に震わしているような痙攣をして見せたり、なかなかの演技力で、われわれやスタッフ、観客を惹きつける。
再び起き上がった彼は、またもや気を胸に溜め込むような動きをした後、十分ほど時間が過ぎただろうか。
「今日はできない」
と言い出した。あはは。彼は日本に旅行したかっただけなのか? という思いが湧いてきて仕方がなかった。誰一人、そんなことができるはずがないと思っていたから失望感は少なかったが、もう少し何とかできなかったのか。しがらみがないとはいえ、これほど「何もない」のに、よくテレビ番組に登場しようと思えるものである。

もう一人、ウクライナからサーシャという12歳の少女がやってきた。彼女は毎日2時間は目隠しをしたまま過ごして透視力を鍛えているのだという。親がやらせている感が非常に強く、少なからずかわいそうな感じがしたものだ。
彼女は、他人が描いた絵の隣に置いた画用紙に、絵柄を再現していくというデモンストレーションを得意とする。以前にロシアからやってきたゴールヌイという自称超能力者と同じく、ロシアでは一般的な手法なのだろうか、鼻梁によって押し上げられた目隠しと目の下にできた隙間から覗いて書くだけのシンプルというか、いたって原始的な手法なのだが、目が引っ込んで鼻が突出している彼や彼女と違い、日本人には真似がしにくいものだ。
彼女の実演をやりにくくするのは簡単で、絵を目の高さより上に掲げればすむことだ。これを従来のように覗き見ようとすると、顔は天を仰ぐようにしなければならなくなる。必ずテーブルに置いて演じるのはそのためだ。
ここで、番組制作者が提案をして、競泳用のゴーグルを黒く塗りつぶしたものを使用することになった。
前日の打ち合わせでそのことを提案した途端に彼女が泣き出して、
「その代わり一回しかやらない」
と条件をつけてきた。我々「否定派」(バラエティ的呼称なので問題ははらんでいる。抵抗感はあるが)の野坂昭如氏、大槻義彦氏と私はそれぞれ桐の箱を事前に渡されていて、私物を入れて自宅から持っていくように言われていたのだが、当日になって使用しないことになってしまった。別の番組で以前に彼女が出演したときに、テレビで見ていた私は対策を講じて用意していったのに、「没」扱いになってしまった。
さて、ゴーグルでの実演は、女性タレントが描いたウサギの図柄をほぼ「当てた」形で再現、サーシャは喝采を浴びたが、異国に連れて来られて親の指図でこんなまやかしを強制されている少女に、1千数百万人の眼前で恥をかかせる事にはためらってしまった。
番組内では暴く機会を逸したが、実は私が休憩中にゴーグルをはめて確認したところでは、右目にあたる側の左前の角の黒い塗料が、私のような細かい性格でもないと見つけられないほど小さくはがれていたのだ。ピンホールほどだが、内側から外を見た場合は、簡単な図柄なら容易にわかる。右目で左側を見るわけだから、左側に置いた元の絵は盗み見ることができる。しかし、右側は見えないので、恐ろしく下手でアンバランスな絵となり、何よりもトリックを物語っているのは、さらに右側に置かれたカラーのフェルトペンの色を、正しく選べなかった事だ。
後に「噂の真相」という雑誌で大槻教授が、彼女の顔に残ったゴーグルの跡には切れ目があって、そこから見たのではという説を唱えておられたが、それでは像を認識するのは少し無理なように感じる。


  血液型
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●某月某日
大阪のミナミにあるバーで、たまたま居合わせた歌舞伎役者の中村勘九郎氏に「松尾さん、血液型は何型ですか」と問われる。素直に答えれば気まずい空気は流れないのに、この日も、「すみません、医療目的以外では血液型を言わないようにしているのです」と言ってしまった。名優として尊敬しているので、親睦を深めるいい機会だったのにと、言い回しを反省するも、今後の妙案は浮かばず。