松尾オススメの迷店!

日本中の桜の木の下
Date: 2006-03-28 (Tue)

またもや店ではないが、宴会場として。

桜の下で、
大音声でカラオケをがなり、
青いシートを敷いて美観を汚し、
アウトドアグッズを開いてバーベキューをやらかし、
その場にゴミを捨てて帰る人達に、
国外退去を命じる。すぐだ。

歌いたかったら、三味線弾いて肉声でやれ!
電子音と、歪みと、ハウリングと、調子っぱずれをなぜ赤の他人に聴かせたいか。

真っ青な被災地シートを敷きたいならその上に邪魔にならぬござを敷け。100円ショップで売っとるわい。
桜の淡い色調の下に、あのケミカルなブルーが広がる様は、あまりにも汚い。

桜の下でバーベキューをするな!桜のほのかな香りを楽しみたいのに、煙、炭や肉やソースやニンニクの臭いを拡散させるな。
臭気不拡散条約に調印せよ。

ゴミを持って帰れ!
桜の下に捨てる意味が分からない。なぜ発砲スチロールや紙の皿、割り箸、ペットボトル、焼きそばやバーベキューの焼き残し食べ残しを捨てるのか。
犬畜生以下だ。犬にも失礼だ。

そんなデリカシーのない輩に、花など愛でる気持ちが湧くとは思えない。
桜を騒ぐ口実にするな。静かに飲めんのか。酒がまずくなる。

あ、飲むのは良いのか。

とにかく、汚い歌で聴覚、無粋なシートで視覚、バーベキューで嗅覚、酒がまずくなり味覚、生ゴミを踏んで触覚と、五感全てで不快にさせられる野暮な花見のスタイルは、花見ではなく馬鹿見である。「馬鹿見世興行半月公演」だ。

で、こんなことを書きながら、実は花見に行ったわけではなく、今行われているであろう様相を想像で一人怒るわけの分からなさに乾杯。

風流も 茶人も失せる 花の宴    喫宙


  あるディレクター氏
Date: 2006-03-16 (Thu)

店ではないが、付録として。

今時、こんな人はほとんどいないので、珍しい例として書き留めておこうと思う。

渋谷で番組のMA録りをしていた時の事。
ディレクターの女性があまりにもへんてこりんな応対をするので、ちょいとイライラ。

最初からそれを気にして恐縮しているプロデューサー氏が大変に気の毒。上司にこんな思いをさせるなんて、コネ入社か!? フリーかな。しかしフリーならこんな人間は使って貰えないだろうし……。

「しくおねあいっしゃああす」

なんて、音声部分は我慢するとしても、 目を見るどころか、あさっての方を見て何かを言う事の違和感がどうにもいやだった。そして、顔はつとめてそうしているのか、けだるいデカダンス的役作り。浅野温子?

全てにおいて消極的になる空気を醸し出してくれたおかげで、すこぶる録音は早くおわり、
「お疲れさまでした」
と私がアナウンスブースから出たら、彼女から見れば私と直角の方向にある、床と壁の接点当りを見て、
「おっつかれしたあー」
とおっしゃる。何か作業で手が塞がっているとか、気を取られているのではなく、格好を付けているオーラ燦々。真横の顔に自信があるのかな。それが、「出来るクリエイター」を気取っているから、背伸びで脚がつらないかと心配になってしまう。

ナレーションの収録で、「コメントを聴いた感じこんな風で」「ここの言葉をこうしたい」なんて微妙なニュアンスに関する指示を、「おっつかれっしたあー」に言われたくないものだ。

世の中には、挨拶の言葉をはっきり言うと損でもすると思っているかのような人が多い。桁違いの確率で、得をする事に気がつかないんだなあ。


  赤坂の寿司店「U」
Date: 2006-03-16 (Thu)

Tさんに連れられて行った寿司屋。どこも予約が一杯で、消極的選択で入った赤坂の手品バーの近くにある「U」は、なかなかに強者だ。

まずは、私の顔を見るなり、六本木のバー「W」のママのうわさ話から始まった口八丁。昔は六本木に店があったそうで、赤坂に8年ほど前に移転したとか。

その後が問題。カウンターに座るとほどなくして、私の畏友が客として来た時の様子をペラペラと喋り倒しこき下ろすという、客商売にあるまじき狼藉。ただ食いしたわけでも、接待されて来たわけでもない客のことをである。もちろん、接待だろうが何だろうが客には関係ない。その話題にされた人は作家であり、ある重職についている有名な人なので、他人であれば

「へえー、そんな人も来てるんだあ」

と感心するかも知れないが、有名人の名前を出してハッタリにするのは、逆に行きたくなくなる人間もいる。だいたい、公務員や医者、弁護士でなくとも、道義上の「守秘義務」を守るのは、サーヴィス業として基本的な事ではないか。

「いらっしゃいますよ」

程度なら、風俗関係でなければ問題はないかも知れないけれど、悪口を言うのは度を超している。

以前、下北沢の本多劇場近くの「S」という寿司屋に行った時も、何やら色々ネタ選びなどで求道者ぶっているわりには、私が一緒に司会をしている女性アナウンサーの名前を出して

「◯◯さんと来てましたがね、二人はつきあってますよ」

などと言ったので、もう二度と行っていない。

赤坂の「U」に話を戻す。
一端の寿司職人としては当然の「お嫌いなもの、お体に障るもの」という質問が一切無しで始まったルーティーンは、心のこもったお仕事ぶり、とはお世辞にも言いにくかった。困ったことに魚の肝を湯通ししたつまみが出され、嗅覚、味覚が超絶的に研ぎ澄まされているTさんは、食べて「まさか!」と思ったようで、

「これは何の肝ですか」
「鯖です」
「!……やっぱり」

実は、Tさんは鯖アレルギー。喉が腫れ上がって呼吸困難になるやも知れず、しかし平気でその肝を出す、赤坂の一流気取りの寿司店に、怒りをこらえていらっしゃるTさん。彼はサーヴィス業で世界一の称号を手にした方、そんなことをおくびにも出すはずもなく、私一人が義憤にかられ、かりかりぶちぶち音が出るほどのコモエスタ赤坂。ましてや、前に来た時に鯖アレルギーであることを店主は聞いて知っていたのである!

「そうでしたよねー」
だと!
その後、まともな謝罪も一切なし。Tさんは少しも騒がず、独り言のように「大丈夫かな」と小さく呟いたのみで、後はニコニコしていらっしゃったが、心中察するに余りあり。
カウンター8席の店で、さも「行き届いている」かのような、なかなかのもったいを付けておきながら、ちょっと首を傾げてしまうこの、「値段だけ高級寿司店」に、あなたも一度、ボナペティ。

味は悪くないが、後味が悪い。


  ふくのM「T」
Date: 2006-02-18 (Sat)

小倉で、打ち合わせがてら何を食べようかと思案すれど、思いつかずにホテルのフロントで聞いたら、河豚屋を教えてくれた。下関も至近距離で、美味かろうと、取材もかねて奮発する事にした。

メンバーは女優Sさんとマネージャー氏、うちのマネージャーと私の4人。
伊勢丹から南へ150メートルほどの繁華街の路地沿いにある。
わりと大きな店だった。

3階の座敷に通されると、隣りのお膳で、有閑マダムのような3人が、とうに食事は終わっているのだろうけれど、これでもかというほど煙を口から鼻から吐き出しながらカルデラ状態で姦しい。向かいのお膳は茶瓶重役風とベテラン女子社員風が生めかしい会話を交わしている。こういう本物志向の方々が来る店なのだと期待も高まる。

ふぐちりコース5600円と奮発。
河豚は、まあまあ旨うございました。

てっさを食べている時に、やや込み入った話になった。そこへ現れたのは、制服の着物をアレンジしたようなものを着た女性。もちろん従業員の制服。あきらかに、「はしゃいでいる」のだが、その割って入る時の息が、「ご注文いただいたものが売り切れでして!」という勢いだったので、話を中断して返事をすると、

「写真撮ってもらっていーですかあ?」

という、とてもプリミティヴな表現で、あっけらかんと明るい。きっと皆の人気者だろうなあ。しかし、どう考えても仕事の話をしている客にそういう事を要求できる自然児的な教育に、得難い素晴らしさを感じ感動。何か、忘れていたものを思い出させてくれたかもしれない。もちろん、マネージャー氏がやんわりとお断りなさって、握手で収まる。

次に出て来た唐揚げを食べ始めると、今度は着物姿の女将が、もうひとりの年配の着物婦人を連れて、横に座り込んだ。女将であるとは名乗らなかったが、あとで「あれは誰か」とアルバイトの店員さんに聞いて判明。つまり、二人とも何者であるとも判明しないままで、時間を共有する。

さかんに、ベラベラと話し始める。「本日はありがとうございます」と言ったので、その瞬間に店の人だという事くらいは分かったが。

唐揚げを口に運び辛そうにしているSさんに対して、

「まあ、ほんとにかわいい」
「ほんとに」

って、成人女性の客に言う事なのだと学ばされる。流石は大きなお店の女将だ。

「あら、そちらの方(つまり私)も見た事あるわ」
「ほんとに」
「やっぱりなんていうか……」
「ねえ!」

と、バランスを取る事も忘れないプロ意識。
唐揚げにむしゃぶりつきたいのに、なかなか去ってくれないので、「ドリフ大爆笑2006」的、妙な空気が生まれる。こういう雰囲気を大事にする店って好きだなあ。
あげくの果てに、金髪長髪のマネージャー氏に向かって、

「まあ、こちらのかたも!」
「あらほんと」
「いつもねえ」
「そうそう」

と言い出した。なぜ彼を知っているのか、謎のままだ。やはり、こういう名店の女将ともなると、色々勉強するのだろう。頭が下がる。

ふぐちりの準備が始まった。火をつける時に、溜まっていたガスに引火して私たちの顔を消毒してくださり、今日スペースワールドでジェットコースターに乗れず残念がっていたSさんにもドキドキ感を与えてくれる究極のサービス。よくあることだが、店員さんは全く気にしない。任せて安心な頼れる感じだ。

しかし、何のガイダンスもないまま、土鍋と蓋の隙間から勢い良く吹き出し、素人4人組はリトルパニック。中はぐらぐらと、すべてが煮えたぎっていた。マロニーまでも。何という豪快さ。惚れた。

ポン酢が薄まってしまったので追加が欲しくて呼ぶも、本当にすぐのところの物陰で食器を扱う音が聞こえているのに、私の耳障りな声が聞こえないのか、じらし上手。

雑炊までたどり着くかなあと思いながらも、やはり食べてしまう私たち。ぐらんぐらんに沸騰し続ける土鍋に、溶き卵を早くから入れて煮続けるユニークな調理法。一見荒っぽそうに見える女性店員さんが、身だしなみはきちんとしなければと、髪をかきあげ、ご飯を入れ、髪をかきかき、その指でアサツキネギを入れてくれる。良い出汁が出るだろうなあ。

あ、出汁もそうだけど、雑炊に白い粉を入れるので「塩ですか?」と聞くと、胸を張って化学調味料の名をおっしゃった。このアカウンタビリティの行き届いたお店で、楽しいひとときを過ごしてみませんか?

星 ★★★★★

( ★ =グッド ★★ =ベリーグッド ★★★ =エクセレンス ★★★★ =マーベラス ★★★★★ =ミラクル )


  Sクリニック
Date: 2005-07-09 (Sat)

 十年程前からつきあって来た右腕肘近くの謎の物体とおさらばする日がやって来た。
最初は指で押さえて皮膚を寄せるようにしないと分からなかったしこりが右肘の外側にできたのが十年程前。最初は面白がってぐりぐり触っていたのだが、次第に加速度を付けて大きくなって来たのが三年程前からか。「癌かも」と心配になりながらも、「まさか」と思って放ったらかしにしていたら、ウズラの卵程の大きさになってしまったので、半袖のTシャツなどを着ているとどうにも目立つ。
「それ何」などと聞いてくれると良いのだが、明らかに見たくせにわざと触れないようにする「良い人達」がかえって不快になって来たので、夏だというのに切開して取り出すことにした。
今まで数回、あちらこちらの医者へ行ってついでの時に見てもらったが、今回初めて近所の皮膚科で病名が分かった。
「結節性筋膜炎」
というらしい。しかし、切りたいというと必ず「入院が必要」と言われる。もう、3軒程そうだった。しかし、「Sクリニック」は違った。以外と小商いが多い私は、細切れのスケジュールで動いている。おいそれはと休むことは難しい。おまけに、月末に夏休みを押さえてあるので、入院は考えにくかった。
素人目に見ても大した症状じゃないのに、入院で稼ごうとしているのではと勘ぐりたくなるような状態。信頼できる筋からのご紹介、「帰依」することにさせていただいた。
ブラックジャックを彷彿とさせる手際の良さは、前田知洋さんのカードマジックに劣らぬほど鮮やか。麻酔が効かない奥の部分を切られるときも、思わず痛みを忘れてしまった程だ。糸で縫っていくときの手さばきはスローモーションで見たくなる程。それなのに、お口は世間話をしながら緊張をほぐす作業を忘れない。
ある女性タレントのお母さんがかっこいい、という話をしていらっしゃったのでこちらも手術七分会話三分の神経でいたら、
「最近はどんなお仕事を」
とおっしゃる。その女性タレントの情報があまりないので、
「どうでしょう」
といい加減に答えたら、
「前は三人でやってらっしゃったんでしたっけ?」
という。
「風間三姉妹かな。いや、リボンやMIKEのようなグループだったかな」
と私も頭の中で混乱を始めた。
「元々、ソロのアイドルで出ましたから……」
と私が言った途端、医師、看護婦以下、全員が沈黙してしまった。
どうも、私のことを聞いてくれていたらしい。私はずっと、その女性タレントの話が続いているものと思っていたので、アイドルと言ったのだが。
一瞬の気まずい間の後、話を軌道修正し、そうこうするうちに手だけは作業が進んでいき、気がつけば包帯を巻かれているようなあんばい。
でほどなくして「産み落とされた」白みがかった楕円の球体は、名前をつけたくなる程の「完成度」だった。
とても良く説明をしてくれ、質問がしやすい空気を作ってくれ、コミュニケーションを盛んに取ってくれる。それで腕が確かと来たら、こういう人こそ本物の医者だなあと、落ちもなく考える今日この頃。まあ、このごろは余分だが。

後からよくよく考えたら、三人というのはコント赤信号のことで、私はどうもラサール石井氏と勘違いされていたようだ。全然違いますよ、名医。


  ビックリカメラ
Date: 2004-08-13 (Fri)

 渋谷にあるカメラ店でMacのソフトを購入しようと、店の前でマネージャー運転の車から降り、マネージャーには先に、近くにあるラジオスタジオに入っていてもらうつもりで後部座席のカバンから現金を取り出そうとしていると、そのカメラ店のガードマンが後ろから
「ちょっと、ここ駐車禁止だよ!」
と余りにも横柄な御注意。
「わかってるよ、今降りただけだから」
と言っているのになおも乱暴に責めるので、
「見れば分かるだろう」
と言えば、もう一人の先輩面した男が近づいてきた。
「なんだとぉ、こらぁ!」
だと。ここはマフィアが経営しているのか。タクシーにもいちいち食って掛かっているのか。その一瞬にして
「この系列の店で物を買うのはやめよう」
と心に誓い、車に乗り込んでその場を去った。
そのとき、サイドミラーに、ニタニタせせら笑いながらこちらを見送る二人が、なかなかかっこよくて憧れてしまった。自分が絶対の正義だと勘違いしてしまっているのだろうなあ。おそらく彼らは自分を雇っている店に来た客ではないと踏んだのだろうけれども、よしんばそうだったとしても、愚連隊に警備を要請している巨大店舗は業者の見直しをしてほしいものだ。


  「シェフ、板長を斬る 悪口雑言集 ?」(グラフ社・刊)
Date: 2004-06-22 (Tue)

 今回は、飲食店批評の本を紹介。
以前はよく、テレビの情報番組や雑誌の「フード・ジャーナリズム」などによって不当に持ち上げられた、実は不誠実な料理店や料理人を、現在は長野県知事になっている田中康夫さんが名指しでぶった斬ってくれていたものだが、今では公人としての立場上、ストレートな批評は控えられているようにも思える。そんなこともあって、ややさびしい気持ちを抱いていた私の目に、刺激的なタイトルが飛び込んできた。「シェフ、板長を斬る 悪口雑言集 ?」とは、なかなか勇ましい。帯には「言わずにゃ、いられぬ」とある。たまたま前作が書店になく、まだ「?」を知らない私は、タイトルを誤読して「シェフが板長を斬る」意味だと思い、洋食の立場から和食を批判するのかと勘違いしたが、実は著者・友里征耶氏は機械商社の代表(日本ソムリエ協会認定ソムリエでもある)で、「シェフや板長を斬」っていたのだ。表題はある種の謙遜なのだろう、悪口どころかとても気持ちのよい文章で、胸が空く痛快エッセイになっている。リズムに乗って、あっという間に読んでしまった。
批評対象になっている料理店の中には、かつて私ものこのこ出かけて不快な思いをしたり、疑問を感じたりした店が複数あって、「やっぱり他にもこう思っていた人がいたのだ!」と心強くも感じたものだ。天然鰻が自慢なのにほとんど養殖物を出すという老舗の鰻屋「N」では、私のいた二階席に隠しマイクが付いていて、厨房に客席の会話が聞こえるようになっているのを発見して愕然としたことがある。客が呼んだときに聞こえるように、という善意の解釈もできないではないが、悪趣味なサービスである。スペイン料理「O」に対する欺瞞も共感する。従業員の尊大な態度や、スペインワインも置いているのに高級フランスワインのページをわざわざ開いて鼻先に突きつけるような商売は、「伯爵」も賛同しないのではないか、と。
しかし、ただの批判だけではなく、客観と主観を混同しない表現で、とてもフェアな人柄が伝わってくる。巻末の、自分に対するネガティヴな質問に解答する章にも納得。


  あるファミリーレストラン
Date: 2003-08-24 (Sun)

 マニュアルが活かせてない小さな例。
あるファミリーレストランで、コーヒーを注文した。
かわいらしい店員さんが、注文をつけながら、こちらを見ないで言った。

「コーヒーのほうは、直ぐにお持ちしてよろしかったですかぁ?」

「のほう」も「よろしかった」も変だが、直ぐでないなら何分後に持ってきてくれるのか、
「後でお願いします」
と言って様子を見ればよかった。
そのとき、コーヒー以外、何も注文していなかったから……。


  渋谷の焼鳥店「鳥●」
Date: 2003-07-02 (Wed)

 戦後のどさくさにできたような感じの小さな店である。
60歳くらいのおばさんが一人で切り盛りする。六人も入れば一杯の店内に十人が詰め込まれ、完全入れ替え制、ディズニーランドやユニバーサルスタジオのアトラクションのように事が進行していく。
6時、7時30分、9時30分の三回で、割合先まで予約が詰まっているような印象だ。注文は、どんぶりに入った大根おろしを配り終わるまで勝手に切り出せない。
「レバーを二本と……」
と言いかけると、
「おやめになったほうがよろしいと思います。御一人一本は多過ぎますので、御二人でどうぞ分け分けして召し上がってください」
と、やんわり注意される。なるほど、串焼きがすべて、サツマイモのような大きさである。中まで火が通らないのではという心配は、新鮮な味わいですぐさま消えた。つくねなど、ハンバーグが三つ並んだようなルックス。
最初の焼き物が炭の上に乗った段階で初めて、飲み物を注文できる。カウンターの中も狭いから、おばさんは360度、くるくると回りながら作業が進んでゆく。
正肉、鴨、皮などたった五本を二人で食べて、腹が一杯になってしまった。決して大味ではなく、すこぶる美味、参りました。道理で、客は文句も言わずにエコノミークラス症候群になりそうな環境でも、おばさんに対して従順に振舞うわけである。
ビール大瓶二本と、日本酒を二合飲んで、すでに腹一杯。
仕上げの胡瓜と大根の漬物も絶妙。
食べ切れなかった大根おろしのどんぶりには、後から白濁した濃厚な鳥スープが注ぎ込まれる。おろし生姜、白髪葱、塩を入れて頂く。これほど窮屈な幸せが他にあるだろうか。
大の男が二人で食って飲んで、合計で4000円(消費税込み!)。ただでさえ込んでいるので、良い店にもかかわらず、店名を記すことは見合わせるという、自分さえ良ければいいのかと言ってほしいほどの展開。


  煙草、ある?三宿にもある有名店
Date: 2003-06-09 (Mon)

 最近急成長の外食産業G社。マスコミ業界御用達の、知らぬ者は無いイタリアン、テックスメックスなどのチェーンを幅広く展開している上場企業だ。若くして役員になっている一人のスタッフは、若い頃から型にはまらない対応で顧客の心を掴んできた。彼は、客から
「煙草ある?」
と聞かれたときの対応一つで、できる奴かそうでない奴かの判別ができるという。
「マイルドセブンとキャスターとセーラムライトと……」
と答えるのはその時点で失格なのだという。
最悪なのは、
「隣がコンビニですので、マルボロもあると思いますよ」
と客に買いに行かせるパターン。
例えば、
「煙草ある?」
「はい!お客様、どの銘柄をお吸いですか?マルボロですか。今店内に無いので、もし宜しければこれ、私のなんですが、つなぎでお吸いになっていただけませんか。手が開いたらすぐに私、買いに参りますので。申し訳御座いません」
私は煙草をやめて十年以上経つが、喫煙者の気持ちはわかる。もし店員からこんな対応をされたら、この店のリピーターになる事は確実だし、次に来るときにその店員が吸っていた銘柄の煙草を手土産にするだろう。果たして彼は、その行為で気を良くしたおじさんが、たまたますぐ近くの大企業の専務だったおかげで、打ち合わせ、打ち上げ、何かと店を使ってもらえるようになり、店長、取締役へと出世したのだった。

ついでに言えば、客が店内にいる時に雨が降り始めたら、馬鹿な店員はお勘定を貰った後は知らん顔をしてしまうが、飲食店では百円ショップなどで売られている傘を用意しておくべきだと思う。
「雨が降り始めてますね、傘はお持ちですか?宜しければお使いください。いつでも、今度いらっしゃるときで結構ですから」
そう言って渡されたら、余程人格がいびつでない限り、返しに来よう、忘れたってまた来よう、という気になるものだ。二十人にやって一本も帰って来なくとも、高々2000円の出費である。客単価が1000程度の店でもやるべきである。それによって、店への愛着が生まれ、来る口実も生まれ、次回の売り上げも生むのである。その程度の対応で客との信頼関係が気づければお安いご用ではないか。

そこのチェーン店の「Z」は、朝の5時までやっているので、集団で酔っ払っていく事が多い。一度、うちのグループの中にいた評論家氏が椅子に座ったまま仰向けに近い形で「寝げろ」を吐いてしまったので、もう限界だと思い解散した。店外に出るまで店員が吐しゃ物に気づかないフリをしてくれていたので助かった。いちおう店長風の人に「連れが吐いて」と報告すると、
「わざわざ言っていただいて助かります」
と、責められるべきはげろったこちらなのに礼を言われてしまった。
この会社は、しばらくは大丈夫だろう。


  東急ホテルのレストラン
Date: 2003-06-09 (Mon)

私の仲の良い俳優T.S.は、H.K.と結婚前にデートで赤坂のキャピトル東急のフランス料理屋に出かけた。「ビリケン」のような彼だが、実は元々暴走族的キャラクターの彼は、ワインリストの前に「ζξб§φ」となってしまった。そこで、隣でかしこまっているソムリエに、
「疎いので、ムニエルさんにお任せします」
と言ってしまった。お分かりの通り、「ソムリエ」を「ムニエル」、日本語で言えばワインと小麦粉を間違えてしまったのだ。
「わっちゃあーー!!」
と思ったH.K.だったが、マナーに反するので彼女は静観していたらしい。
料理とワインが絶妙だったので、彼は別のウェイターを呼んで言った。
「本当に、今日の料理と合うワインを有難う、とムニエルさんに伝えてください」
だと。
勘定を済ませて出口に向かうと、件のソムリエ氏が見送りに出てくれていた.そこでも彼は、
「ムニエルさん、有難う!!本当に美味しかった!」
と握手まで求めてしまった。
この可愛げに、彼女はころりと参ったそうだ!
いや、ポイントはそんな事ではない。いかに客が間違っていようとも、エスコートする者に恥をかかせないのが、給仕をする側の鉄則なのである。
よく寿司屋などで、何かを注文しようとすると板前さんが、
「これだから素人は嫌ンなっちゃうんだよ!」
などという罵声が飛ぶ事があるが、それで平気に食事を続けている客は余程の鈍感な奴かマゾヒストか、どちらかだろう。もちろん、本来江戸のファストフードである寿司に対して多くを求めるなという意見もあるが、一人当たり一万円以上も取っておいてそのぞんざいな扱いは無かろう、と思う。
ソムリエのS.T.さんから聞いた話だが、彼のサロンで高等練習問題として出すものに、
「婦人同伴で訪れた男性に、『シャブリの赤を』と言われた時の対応は如何に?」
というものがある。テレビの番組で、芸能人に二つのワインを飲み比べさせて高級なワインを当てさせるという、供する相手に恥をかかせる事が目的の下劣な企画に加担していたただのワインオタクソムリエなら、
「え、白でしょ。赤?あのねお客さーん、シャブリに赤なんてありませんよ」
とやらかしてくれるだろう。
模範に近い解答としては、
「お客様、よくご存知ですね!ごく少数、あまり外部に出回らない形では作られるんですが、当店には手回りませんので、もしよろしければこちらのものが似たタイプのもので、お好みに合おうかと思われます」
という、晩餐の主催者に恥を欠かせない物言い。


  江戸の鶏処「I」
Date: 2003-06-01 (Sun)

 焼き鳥屋だが、いかにも権威が大好き、といった入り口の「表情」を持っている。そして、何を思ったかこの店の経営者は、店の表にこんな文句を、張り紙ではなく木の板に記して、恵比寿やら四谷やらの店先に掲げている。

「 当店はテレビ、雑誌等のマスコミの取材は一切お断り致しております。店主 」

だっっっっっっっっっさああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
なんだろう、この暴挙は。まるでひっきりなし、業務に差し支えるほど頻繁に、一日に五件も六件も担当者がやって来て、「取材させてください、取材を……」と居座り続けるとでも言うのだろうか。もちろん、そんなことは絶対に有り得ない。有り得ないが、万歩譲ってあったとしても、客としては「こんなメッセージをマスコミの人間相手に伝えるなら、見えないところでやってくれ」と言いたくなる。取材お断りくらい口頭でできないのか。
こんな化粧板を発注する手間も金も無駄ではないか。いや、実は無駄ではない。お馬鹿なグルメファンの足を止めることには、残念ながら成功してしまうのだ。いかにも「取材拒否の店」を、テレビでアピールするほどでもないから看板でやってやれという魂胆が見え透いていて下種な感じである。第一、大量な客を回転させるのに躍起になっている店内で、マニュアルで働かされているアルバイトの皆様に、「頑固一徹」を感じさせろといっても無理な話だ。

実際に私は、複数回この店に打ち上げのような形で連れて行かれたが、「そこそこ旨い」以上の何も無い。なぜ背伸びがしたいのだろう。ある店員に、
「この看板は見っともないから外した方が良いよ」
と言ってみたが、どうやらまったく意味がわからなかったようである。

私がこんな事を主張しているのは、この店で不快な思いをしたからというわけではない。こんな板切れを掲げているくせに、メニューと一緒にテーブルに置かれてあるラミネート加工されたコピーや、便所の鏡横に貼られた紙で、グルメ雑誌やガイド本に載って褒められている事を自慢しまくっていたからだ。
他人事ながら、本当に恥ずかしい店である。


  テレビ禍に陥っている「K亭」
Date: 2003-05-31 (Sat)

 自分がテレビで飯を食っておきながらこんなことを書くのも可笑しなものだが、テレビの情報番組で紹介される飲食店というものを、私は非常に懐疑的に見ている。
一般に、
「テレビでやってた店よ」
と飛びつくテレビ権威主義者は多いが、経営者に余程の信念と壮絶な覚悟がなければ、テレビで紹介の一つもしてもらおうという店は、三ヶ月もしないうちに、そのグレードは下降線を辿ってしまうだろう。
「宣伝の世の中だ。雑誌に広告を載せたり、店先に目立つ看板を掲げたりするのと何が違うのだ。テレビ大いに結構」
と居直り、もしくは反論する向きも多かろうが、多数の人々の間で完全に権威と化してしまったテレビの影響力の凄まじさをわかっていない。しかも、それを目にする人の数も、桁がいくつも違うのである。看板は店の前を通る人にしか見えないし、数万部も売れている雑誌に広告を載せたところで、それを買って、たまたまそのページを読んで、広告にも目をやる人が、果たしてどれだけいるか。テレビは、多いときには数千万人が見てしまうのである。
店は、番組のあざとい演出とリポーターの大袈裟な感想、反応に騙され、必要以上に前向きな期待と幻想を抱いたミーハーな客で溢れる。行列ができ、三日かけていた仕込みが二日にしなければ間に合わなくなり、こんどは二日を一日、一日を半日という風にどんどん短縮せざるを得なくなる。目が届きにくくなってサービスの質も低下する。客が押し寄せる間は、自分は儲けているくせに、忙しいのは客のせいだと言わんばかりの顔つきで、殿様商売が始まるのだ。
元々愛着を持っている客の、全体に占める割合が低くなるわけだから、客をも愛せなくなるだろう。愛していない客に心のこもった料理を出す筈があれへんわなあ。何が「味は心」や。あ、神田川氏がのりうつってしまった。

そもそも経営者に、マスコミで集まる客に流されない骨太な了見があるのかどうかが分かれ目なのだろうが、確率的には非常に難しいのである。つい最近も、テレビで有名なつぼ焼きカレーの店が駄目になってしまっていたのを体験したばかりだ。
そして、さらに嘆かわしいのは、「取材拒否の店」等と持ち上げられて、モザイクで映像を加工させた上で、しかしどの店かは探そうと思えば簡単に判るように紹介してもらっている狡猾な店主達の存在である。


  博多のラーメン屋「I」
Date: 2003-05-01 (Thu)

 相当の有名店である。最近スタントラーメンまで出した「一風堂」ではない。
問題の「I」各チェーン店の店先には、グループのどこかの店舗を訪れた(来てしまった)芸能人やスポーツ選手、文化人のサインが、びっしりと「縮小コピー」して飾ってある。
「うちはこれだけ有名人が食べに来てるんだ、文句ゆうならコイツら全部に言え!」
と言わんばかりの「これでもか」展示なのだ。
もうそれだけで非常に格好悪い事なのだが、
入り口と出口は決められているわ、中に入るとチャルメラの音と機械に録音されている「いらっしゃいませええっ!!」という電子音のような声がスピーカーから響き渡るわ、
みっともないことこの上ない。誰が機械に挨拶されて喜ぶというのか。
サービスのつもりだろう、座席の後ろの壁の鴨居には、サラ金などのポケットティッシュが突っ込まれている。提携でもしているのだろうか。
極め付きは、一人毎に、左右を板でし切られていて、干渉しあわないようになっていることだ。もう、完全にコント、ギャグの世界である。そこで、養鶏場のブロイラー鶏のように、モクモクと食うのだ。

マゾヒスティックで従順な客たちは、注文用の紙に鉛筆で記入してカウンター内にいる店員様に「申請」する。「お上」の真似をしているのだろうか。
紙に記入する方式は大して珍しい事ではないが、板に仕切られた「窓口」で顔も見ずに差し出す様が、異様なのである。
その店員はというと、新メニューの宣伝紹介文句を丸暗記して、声高勝つ早口でまくし立ててその場を去る。
こちらの顔色など見る事は無い。なぜなら暖簾で隠されているから、見様がないのだ。
客は金を運んでくるソロバンの玉でしかないような扱いである。
一度、経営者の顔を見てみたい。二度はいらない。

今は伝統芸能の家に嫁いで引退した舞台女優の後輩が現役時代に食べに行ったときのこと、
「Hさんですよね、はい、サインと写真、願いします」
と店員が言ってきた。ノーメイクでプライベートでもあったため、
「すみません、今日は勘弁してください……」
と断りかけるや否や、店員が分厚いノートを取り出して、
「はい、H.A.さん、サイン・拒否、写真・拒否、ここに記入させていただきます!」
と言い放った。私なら「何とでも書け!」と怒鳴って出て行くところだが、気の弱い彼女は「じゃあ、サインだけします……」と言ってしまった。
こんな店に飾られて、恥ずかしくないのか、有名人の皆様。


  下北沢のアロハ屋
Date: 2003-04-23 (Wed)

今日、知人からこんなメールが来た。

「○&●というアロハシャツの店に入りました。
店主らしき男があれこれマニアックな説明をしてくれるのですが、
これといったものがないので礼を言って出ようとしました。
すると男は
「今度は買いにきてね」
と怒りもあらわに言い放ったのでした。
しばしボーゼンでした。
怒る前に欲しいシャツを置いてくれよ、と心の中で言い返しましたが。」

今度、冷やかしに行ってみよう。で、雰囲気に呑まれて、買ってしまうんだな、似合いもしないのに。