博多のラーメン屋「I」

相当の有名店である。最近スタントラーメンまで出した「一風堂」ではない。
問題の「I」各チェーン店の店先には、グループのどこかの店舗を訪れた(来てしまった)芸能人やスポーツ選手、文化人のサインが、びっしりと「縮小コピー」して飾ってある。
「うちはこれだけ有名人が食べに来てるんだ、文句ゆうならコイツら全部に言え!」
と言わんばかりの「これでもか」展示なのだ。
もうそれだけで非常に格好悪い事なのだが、
入り口と出口は決められているわ、中に入るとチャルメラの音と機械に録音されている「いらっしゃいませええっ!!」という電子音のような声がスピーカーから響き渡るわ、
みっともないことこの上ない。誰が機械に挨拶されて喜ぶというのか。
サービスのつもりだろう、座席の後ろの壁の鴨居には、サラ金などのポケットティッシュが突っ込まれている。提携でもしているのだろうか。
極め付きは、一人毎に、左右を板でし切られていて、干渉しあわないようになっていることだ。もう、完全にコント、ギャグの世界である。そこで、養鶏場のブロイラー鶏のように、モクモクと食うのだ。

マゾヒスティックで従順な客たちは、注文用の紙に鉛筆で記入してカウンター内にいる店員様に「申請」する。「お上」の真似をしているのだろうか。
紙に記入する方式は大して珍しい事ではないが、板に仕切られた「窓口」で顔も見ずに差し出す様が、異様なのである。
その店員はというと、新メニューの宣伝紹介文句を丸暗記して、声高勝つ早口でまくし立ててその場を去る。
こちらの顔色など見る事は無い。なぜなら暖簾で隠されているから、見様がないのだ。
客は金を運んでくるソロバンの玉でしかないような扱いである。
一度、経営者の顔を見てみたい。二度はいらない。

今は伝統芸能の家に嫁いで引退した舞台女優の後輩が現役時代に食べに行ったときのこと、
「Hさんですよね、はい、サインと写真、願いします」
と店員が言ってきた。ノーメイクでプライベートでもあったため、
「すみません、今日は勘弁してください……」
と断りかけるや否や、店員が分厚いノートを取り出して、
「はい、H.A.さん、サイン・拒否、写真・拒否、ここに記入させていただきます!」
と言い放った。私なら「何とでも書け!」と怒鳴って出て行くところだが、気の弱い彼女は「じゃあ、サインだけします……」と言ってしまった。
こんな店に飾られて、恥ずかしくないのか、有名人の皆様。